88人が本棚に入れています
本棚に追加
「お、太郎じゃん!」
振り返ると、ニヤリと歯を見せた男子生徒が私に向かって何かを投げてくる。
すると、ソレは私の足元に落下してパサリと虚しい音をたてる。
「お前にもやるよ!」
やるよって、自分のモノでもないくせに……。そう思いながら、私は腰を曲げると足元のソレを拾う。
「もっとあんだろー? お坊ちゃん!」
「そーだよ! もっと持ってんでしょー! キャハハ!!」
舌っ足らずの気持ち悪い喋り声。キンキンと響く下品な笑い声。
耳に膜を張るイメージをすると、もう何も聞こえない。そうやって、何も聞こえないフリをして拾い上げたソレを懐にしまう。
__そうしないと、次は私の番だから。
最初のコメントを投稿しよう!