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「ノソノソ動くなよ。カメッ!」
カメと呼ばれている相手は、俯いているから顔は見えないけれど男子生徒だった。
上履きの色で私達と同じ学年だということまではわかる。
「カメちゃーん! ほら、もっと出しなよー!!」
どうしてカメが狙われたのかは知らない。
いや、理由なんてないんだ。だっていつだって、コイツらの気分だから。
気分によってターゲットを変えていく。
だからターゲットになった奴は、コイツらが飽きるまで黙って堪えなければならない。
「おい、太郎! 何ボサッとしてんだよ! こっち来いよ!」
ニタニタと笑っている男が、私に向かって手招きする。しょうがないから、私もいつものように緩く巻かれた茶色の髪を揺らしながら、笑顔でその輪に近づいた。
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