一番のごちそう

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 彼らは、俺のために寝床の用意もしてくれた。  この数日間ろくに眠っていなかった俺は、久しぶりに平らな場所で眠ることが出来る安心感から、すぐに眠り込んでしまった。  どれくらい眠っていただろう。俺は人の気配を感じ目を覚ました。  外が気になりそっと覗いてみると、火を囲むように人が集まっているのが見えた。  男たちが鉈のような物を研いでいる側で、「うぅ……」と呻くような声が聞こえる。  よく見ると、何かが木の棒に吊るされているのが分かる。 「……!」  俺は驚愕した。  それは、人間だった。  しかも、その人間は俺と同じ格好をしていた。  そう、吊るされていたのは、はぐれた隊員の1人だったのだ。  隊員の男は猿ぐつわをされ、手足は縛られ、その表情は恐怖に満ちている。 『……』  さっきの長老とおぼしき人物が何かを言った。すると、集落の男たちが木の棒を担ぎ、火の焚かれている方へと運んでいく。 「んんんっ!」  男が悲痛の叫びを上げる。  そこで俺は理解した。  ここの集落の者は、人狩り族だったのだ。
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