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俺達の任務は、先月消息をたった調査部隊の捜索だった。
先の部隊は、この辺りに住んでいる少数民族を調査するために派遣されていたのだが、ジャングルに入って数日、連絡の取れない状況となった。
その後、何人かが追加任務に当たったが、その部隊さえも戻って来なかったという。
そこで今回、俺達の捜索部隊が来たのだが……。どうやら、この人狩り族が原因のようだ。
俺はリュックの中から拳銃を取り出した。
銃の腕は確かではないが、脅かすくらいはできるだろう。
このままでは、あの隊員も俺も、人狩り族の食事となってしまう。
俺は意を決して外に飛び出した。
『パーン!』
威嚇するように空に向けて撃つと、人狩り族はギョッとした様子で俺を見た。
「そこをどけ!」
言葉が通じないのは分かっていたが、俺が銃を向けるとそろそろと離れていった。
俺は、素早く隊員の傍に駆け寄ると、ナイフを取り出し縄を切った。
「た、助かった……」
隊員は心底ホッとしたようだが、事態はまだ終わっていない。
人狩り族は石槍などの武器を持ち、俺達に迫っていたのだ。
「走れるか?」
「ああ」
俺は燃え盛る薪に向けて銃を撃った。その勢いで、火のついた薪が四方に飛び散る。
「今だ。走れ!」
俺達は走り出した。
集落を抜け森に逃げ込む。
夜の森だ。密林に入ってしまえば、そう簡単に追っては来れないだろう。
しばらく走って足を止めた。奴らが追ってくる様子はない。
俺は「ふう」と息を吐き出した。
「ここがどの辺か分かるかい?」
「ああ。荷物は盗られたが、コンパスはここに」
夜光塗料の塗られたコンパスは、ゆらゆら揺れながら帰るべき方向を指し示している。
「よし、急ごう」
俺達は捜索本部のあるテントに向けて歩き出した。
数日後、俺達は捜索本部のある森の外へと帰還した。
戻ってきたのは、俺達を含め3人。1人は、はぐれた時点でここに戻ってきたそうだ。
だが、他の隊員は……。もしかしたら、すでに奴らの腹の中に納まっているのかもしれない。
あの人狩り族は、初めから食糧にするために俺を歓待したのだろう。
もてなし、警戒心を解いた上で襲うつもりだったのだ。
そう、俺達のように迷いこんだ人間が、奴らにとって「一番のごちそう」だったに違いない。
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