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記憶
まひると別れた僕は家に帰る。ただいまと言ったところで返事がある訳では無い。だからといって長年の癖というものは中々にしぶとい。僕はただいまと言って玄関をすり抜けた。家の中では家族が神妙な面持ちで食卓を囲み、僕との思い出話をしているようだ。つい最近まで僕が座っていた席にもしっかりとご飯が用意されていた。僕はいつも通りそこに座る。触れることも食すことも出来ないがそこに居るだけで家族の温かみを感じた。
「あなた覚えてる?あの子はよく妹の看病をしてたわよね。」
「そんな事もあったなぁ、あいつはいつも人の為に動くやつだった…あんないい子なのに、、どうして。」
僕が死んでから家族から笑顔が少なくなった。ここに居るよなんて言っても聞こえやしない。この時だけは僕は死んでしまったと強く実感する。大好きだった時間、家族と過ごす時間がだんだんと苦痛になってくる。僕は現実から目を背けるように自分の部屋に向かった。
僕にとってまひるの存在だけがこの世に留まる理由だ。とは言っても、成仏なんてどうやって出来るんだろう…なんて考えているうちに眠ってしまった。
ミーンミンミンミーン
じりじりと照りつける太陽が肌を刺す。
「あっちぃ。今日も気温がたかいね、……は外に出ても大丈夫なの??」
「うん!大丈夫だよ!今日は絶好調なんだー!ほら!走れるよ!!」ダダダダダダ
「あ!こら!無理はだめって言われてるでしょ!」
「てへ♪怒られちゃった♪」
「ほら、車椅子に戻っておいで!」
「はーい!…ねぇ、?は明日も来る?」
「当ったり前!僕が来なかった日ある?」
「無いね!じゃあまた明日♪」
「うん!また明日、約束だよ!」
「「ゆーびーきーりーげーんまーん!」」
……夢。妹との思い出だろうか。僕の中には懐かしい後味が残っていた。
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