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そんなある日、いつものように公園で会ったとき、彼が突然切り出した。
「杏果さん、今回で最後にしませんか?」
「な、何を…ですか?」
外は、今にも雨が降り出しそうな曇り空。
その空を見上げていた杏果は急に言われ、ビックリして太輔を見た。
「あなたと…こうして過ごすのを終わりにしたい。」
「理由…聞いてもいいですか?」
「偶然ですが、僕も杏果さんも悲しみの中で出会い、傷を舐めあってきた。
でも、どこかで終わらないと前に進めないんです。
杏果さん、あなたは次の恋に…進んでください。」
「それが…理由?」
「…はい。」
「それなら、最後にしなくてもいいですね。」
「それって、どう…。」
聞き終わる前に、唇が塞がれた。
ベンチに座り同じ目線になったまま、杏果のほうからゆっくりと唇を重ねた。
そっと離し、顔が離れようとする瞬間にグイッと引き寄せられ、再び唇が重なった。
「太輔さん…。」
「終わり…。」
チュ…。
「これが、始まり。」
お互いに見つめ合い、ゆっくりと微笑んだ。
fin.
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