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「何で、私の家は奥多摩なんですか?」
「何でって?」
「私たち、本籍は青山ですよね」
「うん、そうね。今、慎一郎君が住んでるでっかい家ね」
「長男が奥地で、次男が都会って、変ですよ」
「うーん、何で?」
「ホントは、父さんたちはずっと青山にいるべきで、叔父さんは仕方なしに移り住んだのかな、って、それならわかる気がするんです。だって、父さんと叔父さん、仲がイマイチ良くないもん。それに、父さんの性格なら、良いところは全部自分が独り占めしちゃうと思うんですよね」
「そうでもないんだけどね」道代は小声で言った。
「裕ちゃん」
「はい」
「あなた――あなたのお父さんと慎一郎君の関係とか……家のこと、どの程度聞かされている?」
「えっと、兄弟だけど、母親が違う」
「そうね」
「だって、一目瞭然でしょ。まったく似てませんもん、あの二人。アカの他人って言われた方が納得できる」
「そ、そこ? 気にするポイントはそこ?」道代はあんぐりと口を開けた。
「そのほかは?」
「うーん、ほか? 奥多摩と青山、家2つ持ってんのにビンボー。三人家族だけど私の上には兄がいた。もう死んじゃったけど」
裕はうーんと首をひねる。
「うちって変てこな一家ですよねえ……違います?」
「そうとも言えるような、言えないような……」あははと道代は曖昧に笑った。
「ま、その家庭ごとに事情も違うし、同じってことはほとんどないし。あまり気にすることはないわよ」
「そう……ですかあ?」
「そう。ま、裕ちゃんは、いつも通り、自分ん家で過ごすように生活してくれればいいわ。もっとも、あなたの家と我が家はルールが違うところもあるから、そこは合わせてもらわないと」
「もちろんです、居候ですから」
裕はぺこりと頭を下げる。
「宜しくお願いします」
「宜しくお願いされます、よ。1年か2年か4年かはわからないけど」
そして道代はため息をつく。
「その1年だか2年だか4年の間に、うちのバカ娘が片付いてくれるといいんだけどねえ!」
と、二階を見上げて嘆いた。
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