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菊雅の経過を説明してくれる洋市さんの声に耳を傾ける。
今は安定してくれていることにはホッとしたけれど、いつまた危険な状態になるのかわからない状況に完全に安心することは出来ない。
「俺もしばらくはこっちにいる。あいつらは通常通りの生活に戻ってもらったよ。瑞樹は菊雅が完全に安定するまではここに篭ることになるな。実父じゃないとここまで時間がかかるのか、それとも菊雅の実父も不完全だから長引いているのかわからないとこだな。」
「そうですね。調べる対象が少な過ぎて判断が出来ませんよ。でも、ホイホイ見つかってくれても複雑ですけどね。」
腕を組みながら言った蓮司さんに、洋市さんが小さく息を吐きながら答えた。
不完全な遺能者が出て来すぎるのも問題だが、菊雅のように実父もまた不完全という遺能者が、研究成果になるほど出てこられても、あまり嬉しく思えない。
「とりあえず、今は菊雅が安定してくれることが先決だな。」
蓮司さんの言葉に俺は素直に頷いた。
そして、眠れる時に寝ようと、菊雅が安定している間に寝ようと思う。いつ菊雅の状態が悪くなるかがわからないから。
菊雅に体液を送り続けて1週間後、漸く菊雅の安定が確実とされた。
暫くは定期的に検査を必要とする。帰っても問題ないと洋市さんが判断した結果、3日の様子見の間に華弥も安定した。
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