寂しい、むかつく、焼き鳥

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「お前こそ、とりあえず友達がいれば安心してるだけの、1人じゃ寂しさに耐えられないただの寂しがり屋じゃんか」 「はぁ? 別に俺だってたまには1人でいたいときもあるし。そのときは友達に言って1人になったりもするから」 「そっか。じゃあさ、1人になりたい気持ちがわかるんだったら、お前より友達が少ないって理由だけで優位に立とうとするなよ」 「いや、別にそういうことじゃねーだろ。もういいわ、お前とかもうどうでもいいわ」 とこんな感じで喧嘩をしてしまった。 喧嘩の内容を思い出してみても、友達の少ない僕が悪いわけでもないし、友達が少ないことで多少の寂しさはあっても、それが僕のスタンダードなのだから仕方ない気もする。 そして彼には、彼のスタンダードがあるのだから、それはそれでいいのではないかと思ってしまう。 なぜ友達が少ないだけの理由で、彼は僕が下にいるような態度をとるのだろうか。 それが僕にはわからないのだが、ここでふと、彼と飲み屋で飲んだ日のことを思い出した。 そこは焼き鳥が美味しいお店だった。 そのときに彼が、好んで食べていたのは「ねぎま」だった。 対して僕は、「つくね」を好んで食べていた。 「つくね」と「ねぎま」。 1つの味を楽しむ「つくね」と、ねぎと一緒に楽しむ「ねぎま」。 数が少ない「つくね」と、ねぎも含めて数が多い「ねぎま」(決して多いと言うわけではないかもしれないが)。 一見、全く違う種類の焼き鳥だが、どちらもタレと塩があるし、どちらも同じ焼き鳥だ。 味や楽しみ方が違うだけであって、どちらも美味しい焼き鳥だ。 「つくね」と「ねぎま」。どっちが美味しくてどっちが優れているかなんて、結局は好みの問題なんじゃないか。 友達は多い方がいい人もいれば、友達は少なくていい人もいる。ただそれだけのことじゃないか。 だから僕は、友達が少なくてもいいと思うし、逆に友達が多い彼のことも、いいんじゃないかと思った。 あとできちんと、彼と仲直りをしよう。 数少ない友達は、僕にとっては大切なのだから。
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