0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
ゆらりゆらり。二人とわかれて再び一人。
いつも通りの無音の世界。幾億の星空の下でまた一人。やれやれだ。
「おや、これはこれは」
突然横から声がした。彼が足を止めて見ると、遠くから一人の人影が歩いてくる。
若い青年で、その体は彼とは逆に水で出来ていた。透き通った体がぼんやりと青く星空の光をうつしている。とても綺麗な姿が彼に近付くとオレンジ色に変わった。
「命の根源よ。どうした不幸そうな顔で」
「命の温床、幸せかい?」
「まぁね、私の子供達は皆元気だ。彼等との過ぎ行く毎日は割と幸せさ」
「…なるほど」
彼はその答えに頷く。青年にも側に居る者が居る。だから幸せなのだろう。
「全ての与え手の君は寂しいのかい?」
寂しい。
言われた言葉を彼はそのまま心の中でつぶやいた。心の穴につぶやきが反響する。
「…そうかもしれない」
青年は優しい顔で困ったように眉を下げた。
「君は強すぎるからねぇ。私は君が好きだし大事に想っているが、触れればあっさり消えてしまうだろうからね」
「…君だけじゃないさ」
彼は寂し気に呟く。
燃える体。それに触れられる者は居ない。彼は生まれてこの方、他人に触れた事がないのだ。
「大いなる恩恵に感謝と愛情を」
「…ありがとう」
優しい青年の言葉は、彼の心の暗闇に消えていった。
最初のコメントを投稿しよう!