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「…大丈夫?」
ふと、鈴の様な声が聞こえた。
炎熱による爆発の轟音が響く中、彼の耳にそれは届いた。
振り返るとそこには白く柔らかく光る女性が居た。地面につくほと長いワンピースを着た、細く綺麗な女性だ。
ずっと前から知っている。ずっと彼女を想っている。なのに…
目から流れる水が炎で一瞬にして霧になった。
「……君の事が好きなのに!」
沸騰する体から涙が溢れ出しては消えていく。
悔しくて悔しくて寂しくて、溶けて消えそうな体で彼は叫ぶ。
叶わない願いを叫ぶ。
「僕は君に触れられない!」
炎熱の向こうでオレンジの光りを映す彼女は、寂し気にこちらに手を伸ばした。
「…ごめんね」
ブワッ!っと彼女から吹いた風が、彼の中を走り抜けた。
彼の体の力が抜けて、どさっと音を立てて倒れる。彼の体は赤く燃えているが、周りの炎は消え去った。
ぶすぶすという音と共に、彼の体の炎もゆっくりと引いていく。
しばらくして残ったのは、眠る一人の青年。
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