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触れる温度になってから、彼女は彼を部屋に入れる。寝床に横たえると、その縁に座った。
優しく頭をなでる。暖かい熱が手の平を伝わってくる。
この時だけの触れ合いだ。彼が目を覚ませば、こんな事は出来ない。
「…私もあなたが好き」
冷たい世界に満天の星空。彼女は一人、心を告げる。
「うまくいかないものね。どんなに力があっても…」
彼女も寂しい。
語れる相手は触れられず、触れられる相手は語れない。それでも触れられない彼よりはと、文句をどこにも言わずにつぐむ。
彼女は優しく彼を見つめ、屈んでそっと口づけをした。
「夜の私に出来るのは、寝かせる事と夢を見せる事だけ。こんな事しか出来ないけど……」
彼女は静かに立ち上がる。哀れな彼を起こさぬように。せめて夢の中だけでも…。
「おやすみ、…太陽」
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