13.三つの恋と三つの愛(二)

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この春、日本で挙式した。そのあと、両家の両親と共に渡米し、冬吾が準備した新居に初めてやって来た。すると、ベッドルームが3つあるアパートに驚いた。 「これでいつ誰が来ても困らないだろ?」 と、冬吾。嬉しくて、あや美と早川先輩に写メして誘った。 子供は年令的に諦めている。それより、できたら現地で資格を取って働きたいと考えている。働くこと。それが私の生きる道だから。 宿命に抗わず、受け入れて穏やかに生きることは、寧ろ大変なことかもしれない。 だけど、目の前にある何かと闘っていくうちに、小さな自分を少しずつ乗り越えて、図らずも成長していたことに後になって気づくことも人生の醍醐味なのだ。 このことは、本部長から教えられた気がしていた。本部長は、私を特別扱いするでもなく、ゆっくり成長していく姿を根気強く見守ってくれていた。実際の力量以上の役目を背負わせながら。 すごい上司だと、つくづく思う。個人の機根に合わせてくれるなんて、そんな上司と出会えて幸せだった。 本部長への感謝は、その後、取締役に昇進が決まった本部長に直接伝えることができた。 本部長は、『芽衣子君にはいつもハラハラドキドキさせられたよ』と笑っていた。楽しんでもらえていたと思えばいいのかな? 明日の事はわからないけれど、だいたいの事は予測可能。悪いことが起こる気がしていた不安な『厄』という考えはとうに払拭した。 例え、悪いことが起きてそれが続いたとしても、それは、手の負えない有形無形のなにかのせいではないし、厄災だと無責任に受け止めてもならないのだ。 明日、そして未来を明るいものと思える今の私。やっと自分を好きな芽衣子になれた気がしている。 終わり
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