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早川先輩からの返信は数分後にあった。やはり驚いたようで、でも、1年数ヶ月ぶりの再会に喜んでもくれた。
わざわざ来るの?と、申し訳なさと、多少の不可解さもあるようだった。
早川先輩の疑問は置いといて、指定された高松市内のホテルの場所をマップで探した。
バスの定刻になり、座席に落ち着いた私は、満員の車内の空気に圧倒されていた。
実は高速バスは人生で二度目。初めては大学時代の友達との旅行だった。その時、私には長距離バスの旅行は無理と思った。
例えば、団体さんの中に入ってしまった場合に、ちょっとお行儀の悪い人に近い席だったら。文句を言おうものなら、四面楚歌になり得る。長時間の我慢を強いられた嫌な記憶が旅の思い出となって残ってしまうのだ。
私は正に、この思いをした。未だに癒えない心の傷になっている。
『慣れるものではないが、怖がっていても仕方がない』私は腹を決めて、とにかく眠ってしまおうと思った。高松到着は明朝8時だ。
定刻に出発したバスの車内は、概ね平穏で、無作法者が居ないことが数分後には判明した。
不安なのはバスのせいだけではないと、自分でも分かっていた。
早川先輩から事の次第を聞いて、真実が自分の先行きを左右するという漠然とした不安。
数日前まで考えてもみなかった、辞職勧告…クビ。
そう、私は本部長に盾突いて、その後、無事に済むとは考えてはいなかった。会社を辞めることになるかも知れないと思っていた。
飯島課長のところへ行くまでもなく。
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