3.不信

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お茶とお菓子を食べていたが、いつの間にか眠ってしまったようだ。途中の休憩でバスが停車すると目が覚め、一旦バスを降りた。 トイレに行き、温かいものが食べたくなったので、おでんを買って食べた。 『ひとり旅って初めてだ』今更ながら、おひとり様の行動に慣れきった自分を笑う。 一生こうなんだろうな、とも思う。 翌朝、高松駅の高速バスターミナルに入った時には、ぐっすり眠れたようで爽快な気分だった。体のあちこちが痛むのは仕方がない。 正月の朝方なので、とにかく開いている店ならどこでも良かったのだが、土地勘がないというのは困ったもので、携帯で地図を見ていてもらちがあかない。右も左も分からないのだ。 面倒なので、近場のビジネスホテルのモーニングを食べに入った。 早川先輩との待ち合わせは、別のホテルのラウンジだった。10時に開くので、それまでモーニングを食べたビジネスホテルで時間を潰す。 待ち合わせ場所に10時ぴったりに入って暫く待つと、懐かしい声が、「芽衣子さん」と呼ぶのが聞こえた。 「早川先輩!」 私は立ち上がり、やって来る早川先輩の元に歩み寄った。 早川先輩は少し痩せた様子ではあったけど、かつてと変わらぬ美しさがあった。 「ご無沙汰していました。お元気でしたか?」 私たちは手を握りあって再会を喜んでいた。 「元気よぉ。突然でびっくりしたわ。まさか芽衣子さんから連絡が来るなんて思いもしなかったから」 「本当、突然ですみません」 私は謝ったけれど、こうして会えたことがどれほど嬉しいか、自分でも思ってもみなかったから、会いに来て本当に良かったと思っていた。
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