4.禍根

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私には、真にへこむようなミスの連続で、楽しんでもらえて良かったですとはとても言えない。 ただ、本部長が言う、幸せなことというのは、なんとなく分かる。 人間、知らなければ生きやすいことがあるもので。 今回のいろんな出来事やいろんな人の思惑…私は想像だにもしなかった。 相性こそはあれ、基本みんなは善良で、裏切りとか恨みとか妬みなんて、私の発想にはなかったものだった。 本部長は真に私を買っていてくれたのかな。言われてみれば、そんな気もするし、そんなことないんじゃないの?と訝しくも思う。 でも、それはそれ、だ。 私は、この件をなんとしても営業部との会議に上げたかった。でも、それを嫌ったのは本部長。より小規模の会議で、と言った。まぁ、早川先輩に関わる件とは知らせてなかったけどね。 それなら、本部長に受けてもらうしかない。受け皿になってもらって、上にあげてもらう。議事録にも残してもらう。 私にはそれぐらいしかできない。四方堂君を頼れば、もしかしたらそれなりの大事に持っていけるかも知れないが、彼は巻き込みたくはない。 それこそ、これから営業部で仕事をする人に、仲間となる人たちの負のイメージとなる話はできない。 早川先輩は、粗方話し終えると、『少し観光でもしていく?』と聞いてくれた。 せっかくなので、JRで栗林公園に向かった。 栗林公園は、修学旅行で訪れたことがあったが、季節が違うのと、あの頃はさして興味もなく見過ごしていたようで、改めて訪れると、初めて目にしたような景観だった。 夕方までそこを散策した後、早川先輩は、家に来ないかと誘ってくれた。 「正月早々、ご家族にご迷惑ですから」 丁重に断った。 帰りのバスの時刻まで付き合うと言ってくれて、私たちは高松駅に戻り、時間まで近場で少し飲むことにした。
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