4.禍根

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「ねぇ芽衣子さん」 昨夜が仕事納めで、今夜が仕事始めだと明るく笑う女将さんのいる小料理屋。 狭いカウンター席に落ち着いた頃、改まって私を呼びかける先輩。 はい?と促すと、先輩は少し言いにくそうにしてから、口を開いた。 「もしかしてなんだけど…四方堂君と付き合ってる?」 おっとぉ…なんと、見抜かれてた? 「えっと、いや、そんなことはない、です、よ」 そうだと言ったようなものだ。嘘つくの、慣れてきたと思ったのに。 先輩は、ふふっと笑っていた。 「芽衣子さんが幸せなら別にどっちでもいいのだけど、あの頃、もしかしてと感じてたものだから」 「ははっ…私の片思いですよ」 私は話してしまおうかと迷ったけれど、もう終わった事だと考え直した。なかったことにしてしまおう、と。 「そうだったの」 「はい。それに、四方堂君はこの年末、婚約したんですよ」 すると、先輩は寂しく笑った。 「そっか…なぁんだ」 「え?」 「芽衣子さんと合うのになって、ずっと思ってたのに。残念だわ」 なんかすみませんと、なぜか謝ってしまった。私だって残念な気持ちでいっぱいだ。 先輩の追及を免れたい一心で、逆に私は尋ねる。 「早川先輩こそ、お付き合いしてた人は?そういう話、一度もしなかった気がしますけど」 先輩はまた、ふふっと笑った。思い出し笑いなのかな。 「芽衣子さんは気がつかなかったのね…私、いたわよ。ずっと社内に」 「えぇっ!」 本当ですかと、カウンター席の隣から、先輩の正面を捉えた。多分、目が血走っていたかもしれない。
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