4.禍根

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明後日、会社の仕事始め。とにかく行動開始だ。まず南雲さんに会おう。 悪意の進言か、誰かのただの勘違いなのか、確認したかった。 私は、南雲さんとどうやって接触しようかと考えていた。 『多分、本当のことは話さないだろうけど…』 車窓から朝焼けを目にしたあと、少し眠った。 新宿に一日半ぶりに舞い戻って、ここまで、実は夢だったんじゃないかとの思いに逃げそうになった。 弱い私…弱さってずるさだ。結局、最後は逃げる。こんな私になにかが成し遂げられるとは到底思えない。 私になんて、早川先輩の傷に塩を塗っただけで、現実などなんにも変えられないんじゃないかな…途端に弱気。 お土産なんてものは買う気もなかったが、いざ東京に戻ってみれば、なにか誰かに買えばよかったと思うところが私のダメなところだ。 ともあれ、午前10時にはアパートに戻っていた。暖房を入れながら、窓を開けて空気を入れ替えた。 コートを羽織ったまま、掃き出し窓の縁に寄りかかり、見るともなしにそこから見えるものを見た。 狭いベランダの先は、生け垣とくすんだブロック塀。大家さんちの大きな平屋の屋根との間の、茂りきったぼさぼさの木立を見つめた。 部屋の正面には何年も変わらぬこの景色が、少し上に目線を上げれば東京の狭い空が見える。
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