1.厄日

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近くのドラッグストアーに入り、痛み止めを手に取る。そして、店内で一番高価なピンクのレースがついたサニタリーショーツも。 するとなぜだか急に物欲が湧き出し、この場で買う必要のない菓子やメーク小物、ストッキングなどの細々したものを手当り次第にカゴに入れていく。 膨れたレジ袋を手に、ドラッグストアーを出ると、行きつけのコンビニで軽食と飲み物を買い、会社に戻った。 オフィスに戻る前にトイレに寄る。あの綺麗なポーチに買ったショーツを戻すつもりだった。 トイレは無人で、私は若草色のポーチを手に取り、ファスナーを開けるとショーツを入れた。 その時、ナプキンなどの感触とは異質な感覚が指に当たったのが気になり、中を覗き込む。と、なにやら折り畳まれた紙切れが入っていた。『?』 私は深く考えずにそれを摘んで目の前に掲げる。 『どろぼう』と書いてあった。 ショックだった。嫌もう、今日の一連の出来事のどの言葉が一番のショックかと言えば、あのメモのインパクトは最後の一撃に相応しかった。私は間違いなくノックアウトされた。 『神さま、これはなにかの罰なのでしょうか?』 これ以上ない程落ち込んで、自席に付き、サンドイッチを口に運びながら物思いに耽った。背中を丸め、机上の一点を見つめる。 『あのポーチの人に多分迷惑を掛けたんだ…だから怒らせた』『でも、盗られたことだけでも怒らせて当然だ』『本部長…本気なのかな…飯島課長って…』 最早、四方堂君のことは頭から吹っ飛んでしまっていた。
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