4.禍根

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結局受け取り、お詫びの品なのにお礼を言っていた私。まぁ、そうだよね。 『帰省してたんだ。それ、ちまき。早めに食べてね』とソイツは言って、自分のアパートに戻って行った。 一人になって、冷静に考えれば、なんで玄関から訪ねない?と思えなくもないが、アイツのやることにマトモな型を当て嵌めようとしてもしょうがないと思うことにした。 故郷は鹿児島とのことで、仕事納めのあとすぐに帰省し、昨日戻ったとのこと。 ちまきは母親の手作りで、新潟出身の母が好んで作るものなのだと。 もち米のちまきは三角形で、熊笹みたいな大きな笹の葉に包まれていた。市販のきな粉が一緒に入っていて、これに砂糖を混ぜて付けて食べてと、アイツが言っていたので早速頂くことにした。 高速のSAで軽くお腹に入れただけで小腹が空いていた。お昼前に買い物に出たかったので、お茶を入れてちまきを食べることにした。 「わぁ、おいしい」 きな粉もちと同じだけど、食感がちょっと違うのと、笹の葉の風味が良かった。 『いいなぁ、こういうの』 実家の母は、あれこれ作ってはくれたが、自分のその時の気分で作る人。 マイブームが中華だったりタイ料理だったりと、片寄るのが難で、いろんなカレーが続いたこともあった。 『お返し、した方がいいのかな…』と、殊勝にも思っていた。この展開は、全く予期していなかった。 食べ終えて、お財布と携帯を持ってスーパーへと出かけた。 明日からの一週間、食べるための食材と日用品の買い足しだ。 私はわざと、明日の南雲さんのことや本部長、四方堂君たちのことは考えないようにしていた。 ぎりぎりまで、そのことから逃げたいという思いがあったのだ。 明日が始まるまでの間に、『なにか』が起きてくれないかと、頭の隅っこで願ってもいた。別の隅っこでは、起きるわけがないと悟ってもいたのだが。
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