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南雲さんは、そこで納得したんだかどうだか分からないが、伝票を掴んでいきなり立ち上がった。
「ま、頑張って」
帰るということだろうが、急だなぁもう。
会計は、誘った私が持ちますと伝えたところ、気持ちよく出し掛けた財布をしまって、『ご馳走さま』とウィンクまでしてくれた。その感じ、慣れないわぁ。
店を出ると、駅の方ではなく会社の方向へ一緒に歩き出したので、一瞬二人とも立ち止まってしまった。
「あ、やっぱり戻られるんですね」
仕事に。
「君も?新年早々、お互い良くやってると思わない?」
私たちは笑い合った。
エレベーターで上がりながら、南雲さんは、腕を組んで壁に寄りかかりながら、私をしげしげと見つめていた。結構真面目な感じで。
「松浦さんて、かなり評判いいよ、うちではね」
「は?」
私のフロアーに止まり、扉が開く。
「じゃあね。概ね楽しかったよ」
怪訝な顔つきで降りた私に、笑顔で手を振っていた。
なんと言うか…南雲さんのペースは、計り知れないものがあった。
『人によったら疲れる相手かもしれないなぁ』
早川先輩と美波が言っていた、『好きになれない』ところがなんとなく分かってきた。
だけど、私的には全然オッケーな感じなんだけど。恋人じゃなくて、友人としてなら。
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