5.疑念

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南雲さんは、そこで納得したんだかどうだか分からないが、伝票を掴んでいきなり立ち上がった。 「ま、頑張って」 帰るということだろうが、急だなぁもう。 会計は、誘った私が持ちますと伝えたところ、気持ちよく出し掛けた財布をしまって、『ご馳走さま』とウィンクまでしてくれた。その感じ、慣れないわぁ。 店を出ると、駅の方ではなく会社の方向へ一緒に歩き出したので、一瞬二人とも立ち止まってしまった。 「あ、やっぱり戻られるんですね」 仕事に。 「君も?新年早々、お互い良くやってると思わない?」 私たちは笑い合った。 エレベーターで上がりながら、南雲さんは、腕を組んで壁に寄りかかりながら、私をしげしげと見つめていた。結構真面目な感じで。 「松浦さんて、かなり評判いいよ、うちではね」 「は?」 私のフロアーに止まり、扉が開く。 「じゃあね。概ね楽しかったよ」 怪訝な顔つきで降りた私に、笑顔で手を振っていた。 なんと言うか…南雲さんのペースは、計り知れないものがあった。 『人によったら疲れる相手かもしれないなぁ』 早川先輩と美波が言っていた、『好きになれない』ところがなんとなく分かってきた。 だけど、私的には全然オッケーな感じなんだけど。恋人じゃなくて、友人としてなら。
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