5.疑念

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定時後、フロアーは殆ど無人となっていた。要領悪いのがバレバレだわ、とクサッていたら、後ろから名前を呼ぶ人が。 驚いて、バッと振り返ると、南雲さんだった。 相変わらず、シュッとして素敵な出で立ち。笑っていたけど、なんでかな? 「残業してるの?営業部も結構残ってるやついるけど、さすがにこっちはみんな早いもんだね」 「嫌味ですか?」 つい、そんな言葉を吐いてしまった。でも、南雲さんの笑顔は崩れない。 「いえいえ。松浦さんが残っていてくれて、わざわざ来た甲斐があったよ。ちょっといい?」 私は、パソコンの手を止めて、座ったまま南雲さんに向き直った。 南雲さんは、気軽な感じであや美の席に座ると、デスクに肘を付け顎を丸めた甲にのせた。そして、私を上目遣いに見つめた。真剣な面持ちで。 「僕の他は、誰が容疑者なの?」 容疑者と聞いてドキッとした。でも、言わんとすることは理解した。 「それが…いないんです」 済まなそうに私は答えた。まるで南雲さんで決まりだと思っていたことがバレバレ。 「そう…」 南雲さんにはそれほど意外な答えではなかったみたいだ。あるいは、早川先輩をそこまで恨む相手がそんなにいる訳がないという思いの表れかもしれない。 「それが、なにか?」 南雲さんは、体を起こして腕組みをした。 「あれから気になって、僕なりに考えたんだけどさ。一人、思いついた奴がいる」 え?一拍置いて、私は前のめりになった。 「だっ誰ですか?」 南雲さんも、一拍置いて答えた。 「真山泰一」
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