5.疑念

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とりあえず、私は真山さんと話した方が良さそうとの考えができたので、南雲さんがこうしてわざわざ足を運んでくれたことには感謝していた。 南雲さんは急に立ち上がって歩き出した。ん?帰るの? 「僕の思い込みだったら、訂正しに来てよ。真山に会うだろ?」 「ええ、そのつもりです」 私は立ち上がり、オフィスの端まで南雲さんを送った。 「じゃあね。そろそろ帰りなぁ」 「ありがとうございました」 私は南雲さんの背中に頭を下げた。なんだかんだ言っても、悪い人ではなさそう。 早川先輩が好きになれないと言ったのは、性格的なことかもしれない。ナルシストな部分、その当時は若いだけに、もっと際立っていたのかも。 失恋とかいろんな社会経験を経て、今の南雲さんが形成されたとしたら、私が見ている南雲さんは、先輩の知る南雲さんより遥かに成長した姿なのではないだろうか。 ふと思いついて、ダメ元で経理の内線に掛けてみた。7時…いないかな。 呼び出し音を6回数えて切った。 『明日の朝、アポ取ろう』 南雲さんのような対応を期待してはならないと、僅かに緊張を感じていた。 あと少しだけと、仕事をしていたら、四方堂君からライン着信。忘れていた。去るものは日々に疎し。私も薄情な奴だ。 『土日、出になった。どっちでもいいから、夜会えない?早川先輩のこと気になってる』 四方堂君もいい奴だ。情がある。でも、話したら尚更関わろうとするのも分かる。なんなら私を先導するぐらいに。 『ごめん。もう少し待って。必ず報告するから』 これが私の情の表し方。ごめんよ、四方堂君。
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