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ラウンジには、コーヒーを飲みながらなにかの原稿をチェックしている人がいた。確か、総務の人かな?
なんだか昨夜寝てないみたいな雰囲気と共に、鬼気迫るオーラを感じた。まるで締切に終われる作家みたいだ。
「芽衣子さん、これ、ここに座りましょう」
あや美はどこからか椅子を調達してきた。カウンターにコーヒーを2つ並べ、窓から見える神田の街を眺めながらホッと息をつく。
大した眺めではない。視界の半分は隣のビルの壁だし。ほとんどが灰色か茶系の雑然とした風景だ。でも、それでも、パソコンより遠いものを見られる癒しがあった。
「そう言えば、最近、四方堂さんに会いましたか?」
あや美は気になっていたのか、真面目な調子で聞いてきた。
「あぁ、四方堂君ね。会ってないわね。あっちも忙しそうよ」
「なんだか寂しいですぅ。一遍に人が去っていって」
「そうね…」
2人揃ってため息をついた。
本当だ、滝沢さんと四方堂君がいなくなった。みちるはなんとか説得しよう。
やる事、考える事が多過ぎて、私は自分のキャパシティをとっくに超えている現状を思っていた。
『全て丸く収めることができるのだろうか』
ミスを犯して周りからフォローされている立場でずっといられたら、きっと責任なんてなくて今よりずっと楽だ。
成長なんてしてないのに、こんなふうに誰かのためになにかをしようとしている自分に、幾分呆れている。
本当は言いたいのだ。『誰か、助けて欲しい』と。
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