48人が本棚に入れています
本棚に追加
あっという間に時は過ぎ、定時を回った。焦る私を同僚たちが笑う。
今日は、なぜだかいつも相性の悪いコピー機を詰まらせたぐらいで済んだのだから、まぁまぁ無事に定時に漕ぎ着けたと言える。
ホワイトボードに外出と書き込み、『少し出てくるね』とあや美に言い置いて行く。
「真山さん?」
あや美はなにやら意味深な笑顔。
なにか誤解してる?と思いきや。
「芽衣子さん、行き詰まったら相談してくださいね」
ちゃんと事の流れは見ていてくれているようだった。
「ありがとう。行ってくるね」
私はコートを手に微笑んで、オフィスを出た。
一昨日の南雲さんの時と同様に、エントランスホールでの待ち合わせ。5分過ぎていたので焦って来たが、真山さんはまだ来ていなかった。
定時後に、ということしか伝えていなかったので、正確に5時にと言うべきだったかなと心配になってくる。
いちいち比べる訳では無いが、南雲さんとは『定時後に』で、待ち合わせは上手くいった。
私は待ち合わせが苦手、というより不得手だ。子供の頃から、友達や家族との待ち合わせが上手くいった試しがなかった。
携帯のない時だったから仕方が無いとも言えるが、『何時に何処で』という情報がなぜだかお互いに伝わり合わなかったり、何処が見つからないとか、別の場所を其処と勘違いしていたとか、ほとんど背中合わせに待ち続けていたとか…本当に、なぜ?と思えるほどの理由で会えないのだ。
今は携帯様々で、会えない不安はないけれど…真山さんと、まさか会えないなんてことが起こり得るかしら?だとしたら、きっとそれは新しいバリエーションだろう。
最初のコメントを投稿しよう!