6.告白

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あっという間に時は過ぎ、定時を回った。焦る私を同僚たちが笑う。 今日は、なぜだかいつも相性の悪いコピー機を詰まらせたぐらいで済んだのだから、まぁまぁ無事に定時に漕ぎ着けたと言える。 ホワイトボードに外出と書き込み、『少し出てくるね』とあや美に言い置いて行く。 「真山さん?」 あや美はなにやら意味深な笑顔。 なにか誤解してる?と思いきや。 「芽衣子さん、行き詰まったら相談してくださいね」 ちゃんと事の流れは見ていてくれているようだった。 「ありがとう。行ってくるね」 私はコートを手に微笑んで、オフィスを出た。 一昨日の南雲さんの時と同様に、エントランスホールでの待ち合わせ。5分過ぎていたので焦って来たが、真山さんはまだ来ていなかった。 定時後に、ということしか伝えていなかったので、正確に5時にと言うべきだったかなと心配になってくる。 いちいち比べる訳では無いが、南雲さんとは『定時後に』で、待ち合わせは上手くいった。 私は待ち合わせが苦手、というより不得手だ。子供の頃から、友達や家族との待ち合わせが上手くいった試しがなかった。 携帯のない時だったから仕方が無いとも言えるが、『何時に何処で』という情報がなぜだかお互いに伝わり合わなかったり、何処が見つからないとか、別の場所を其処と勘違いしていたとか、ほとんど背中合わせに待ち続けていたとか…本当に、なぜ?と思えるほどの理由で会えないのだ。 今は携帯様々で、会えない不安はないけれど…真山さんと、まさか会えないなんてことが起こり得るかしら?だとしたら、きっとそれは新しいバリエーションだろう。
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