6.告白

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などと考えていたら、真山さんらしき男性がエレベーターから降りてきたのが見えた。10分待ったけど…会えて良かったです、はい。 真山さんが私を見つけ、真っ直ぐこちらに歩いてくるのを見て、私は頭を下げた。 真山さんの開口一番は、『お待たせしました』ではなく。 「松浦さん?突然、なんの話があるというのか、正直戸惑ったよ」 真山さんは完全に困り顔の不満口調だった。これは、警戒心が働いたのか。 「すみません。ご足労おかけしますが、もう帰られるようなら、飲みながらでも話しませんか?」 私は南雲さんの時と同じ、近場の飲み屋の名前を出したら、真山さんは不満たらたらだった。 「なら、僕の知ってるところでいい?」 と言い終わらないうちに歩き出していた。 『はい、もちろんいいですよ』 真山さんは一見穏やかな性格に見えるけれど、なんだか自分本位なところのある人のようだと、私は感じていた。これは、要注意だ。 真山さんが連れてきてくれたのは、駅の極近くの喫茶店だった。カフェではなく、客層も年齢層高く、今の時間帯は男性客が多い。 私たちは煙草の匂いの染み付いたソファーに向かい合って座り、二人共コーヒーを注文した。 会った時、いや、最初に電話で話した時から、なぜだか、真山さんには緊張を覚えて、手汗が止まらなかった。 穏やかな風貌。年齢は南雲さんより幾つか下らしいがよく分からない。 まずはいきなりの無礼を重ねて謝り、再度、自己紹介をした。 「松浦さんのことは知っていますよ。仕事の話じゃなさそうだね」 真山さんの表情は、幾分固めで、それを隠そうとか和らげようとの試みは成されない感じだった。 雑談でどうにかなりそうもない。やはり直球で行こう。
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