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私は少し語調を緩めた。
「私は、早川先輩の無実を証明して、先輩の汚名を雪ぎたいのです。もしかしたら、真山さんに責任が及ぶかもしれません。その上で、お願いします…あなたの罪を告白してください」
真山さんの中で、ぎりぎりの葛藤があるのかもしれない。そう思って、真山さんが再び口を開くのを待った。
さすがにストレート過ぎたかな。もしかしたら、見切り発車となったか。
結局、私なんかがなにを言ったって、所詮この人の心に届くわけがない…私には荷が重すぎた…。
心が折れかけて、しゅんとなって俯きかけた時、真山さんの声が聞こえた。
それはとても小さな声だった。
「奈美子は、今どうしてる?今まで…どうしてた?」
少し震える声で、目を伏せ、私に尋ねていた。固い表情は今はなく、なんとなく脱力したような感じに見えた。
「早川先輩は、この年末までこっちで過ごされていたそうです。いつとは聞いてませんが、体を壊されて…それでご実家に戻られたそうです。年明けに高松で会った時はお元気そうでした。でも、もう無理がきかないと仰っていました」
ショックを受けたらしく、真山さんは私を見つめたまま暫し動かない。
「そうだったのか…苦労、していたんだな…」
真山さんは、そのまま俯いてしまった。
南雲さんの読みは確かだった。この人のこの顔を見れば分かる。もしかしたら、罪の意識があったのかもしれないと、私は少し気の毒にも思ってしまった。
「真山さん…」
それでも、ちゃんと事情を話してもらわなきゃ。
すると、真山さんは俯き加減のまま、ぼそぼそと話し出した。
「話すよ…僕は、彼女を陥れた」
やっぱり。理由は?
「先輩と上手くいってなかったんですか?別れたかったのですか?」
目を瞑り、首を横に振った真山さん。疲れが見える。
「…復讐、だよ。僕は…彼女に復讐したかったんだ」
「えっ?」
あんまりにも意外な動機を聞いた。復讐って…付き合っている恋人に、なぜ?
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