48人が本棚に入れています
本棚に追加
「…驚いているね。奈美子から、僕たちは上手くいっていたと聞いてた?」
真山さんは初めて私に笑いかけた。皮肉そうな微笑だったけど。
「先輩はなにも…ただ、他の人で、お二人が上手くいってたとは思えないという意見がありました」
「なるほど、ソイツはなかなかいい読みをしてる…もしかして…いや」
南雲さんだとは言わない方が良さそう。というか、誰と誰から話しを聞いたなんて、真山さんに告げる気はなかった。
でも、もしかしたら、真山さん、気がついてるのかな。南雲さんの存在を…。
「なぜ、復讐なんて…6年半以上つき合ったんですよね?結婚の話などはなかったんですか?」
「結婚か。それは…最初は、僕はそのつもりだった。だけど、奈美子がその気がなくて…僕は…」
真山さんは全てを話そうとしてくれている。それは分かる。でも、話しづらい訳がありそうだ。
「もし、ここだけの話にしたければ、そう仰ってください。動機については黙っていることもできます」
真山さんは、うんと頷いたような格好で、そのまま両手を置いた膝の上に項垂れてしまった。
「僕は…奈美子は、他の男に惹かれているのだと思っていたんだ。僕でなく、そいつとの結婚を望んでいるから、結婚をしたくないのだと…」
「なっ、なんでですか?早川先輩が、他の誰との結婚を望んでたって言うんですか」
何言ってんだ、この人は。
「そう思い込んでいたんだ。つき合っていた間、ほとんどずっと」
嘘でしょ…。
「そんな…一体なぜなんですか?」
グッと両手を握り合わせて、真山さんは、覚悟を決めたように私を見つめて話し出した。
最初のコメントを投稿しよう!