6.告白

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「僕はその理由が南雲なんじゃないかと、実はずっと心に引っかかっていた。二人きりで楽しく過ごしていても、もしかして奈美子は、南雲と過ごしたいと思っているんじゃないか、プレゼントをもらっても、南雲にあげたかったものではないかとか。疑心暗鬼に駆られていたんだ」 「早川先輩が気の毒です。真山さんにそんなふうに思われていたなんて」 「僕は、元々ネガティブな性格で、自分の幸せを素直に喜べないようなところがあるんだよ。楽しい時間も、すぐに終わりを考えてしまうような」 あぁ、分かる。そうやって来るかどうかもわからない不幸に予防線を張り廻らして、深手を負うことから自分の心を守っているんだ。 真山さんという人は、実は幸せに縁遠い人なのかもしれない。 現に、その考え癖が災いして、自ら幸せを遠ざけてしまった。 「そんなふうに開き直られたら、早川先輩はたまったもんじゃありません」 真山さんは済まなそうに、そうだねと呟いた。 私が責めても甲斐のないくらい、実は真山さん本人は反省しきりなのだ。 真山さんは更に話しを続けた。 「6年以上つき合いながら、僕は、いつか奈美子を南雲に取られるんじゃないか、実は二股をかけられているんじゃないか、そんなことばかり考えてしまって、真に楽しめたことがなかった。全然、幸せじゃないし、むしろ辛くてキツかったんだ…だから」 ここからが本題だ。私は無意識に、ゴクッと唾を飲んだ。 「一昨年の春、社内の奈美子から携帯へ電話があったんだ、珍しく。職場の派遣社員の背任行為があって、自分もいろいろ聞かれている。社員の中に共犯者がいるんじゃないかと、現状は共犯者探しだと言われたんだ」 「それで、真山さんは、その共犯者が早川先輩であるかのようなことを誰に話したのですか?」 核心をズバリ尋ねた。この後に及んで隠し立てもしないだろう。 「それ…どうしても言わないとダメだよね…まさかあんなふうにバッサリと奈美子を切るとは思わなかったが、あの時は、別れを告げるにも非の打ちどころのない奈美子になんと言っていいのか分からず、そんな時に渡りに舟とばかり、つい言ってしまったんだ」 だから、誰に!
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