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「それで、具体的には真山さんはどうやって矢崎部長の耳に入れたんです?」
「うん…その頃僕は繁忙期で、決算業務も大詰めだったから、かなり遅くまで残業していたんだ。そんな時に矢崎部長がひょっこり現れて、うちの課長にその件をこぼしていたんだ」
「えぇ…矢崎部長、話しちゃったんですか?口軽ぅい」
私はつい、思ったことを思ったまま言ってしまったが、真山さんは苦笑いで返した。
「2人は同期なんだそうだよ。たまに気晴らしにやって来るんだ、あの人は。で、企画室の派遣と共犯の社員は誰だろうという言葉を聞いて…その場にいたのはその2人と僕だけで」
「空とぼけて、早川先輩が派遣と親密だと話したんですね」
ちょっと嫌な言い方をしてしまった。でも、真山さんのした事は、どんな言い訳をされても、仕方ないで済ますことができないような事だと思う。
真山さんは言葉なく頭を下げてから、「その通りだよ」と、素直に認めた。
きっと、後味の悪い思いはずっとだったろうと思った。真山さんは、実はとても、気の小さい人なのだと、話してみるとだんだん分かってきた。
だけど、あと一つ。聞いておきたいことがあった。
「真山さんは、さっき、まさかあんなふうにバッサリ切られるとは思わなかったと言いました。それなら、先輩がどの程度の痛手を受けると想像していたんですか?別れる理由付けになるぐらいってどんなことなんでしょう」
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