6.告白

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真山さんはバツの悪そうな顔つきで、黙ってしまった。なんにせよ、罪を作り上げた真山さんが一番悪い。いや、順列なんてつけようがない。悪いのは、真山さんと矢崎部長。そして、我が本部長だ。 いや、やはり、矢崎部長の悪辣さは段違いかもしれない。 人を陥れるために噂話のようなものを利用した。本部長が事の真偽を確認する間も与えず、糾弾の手を緩めなかった。 多分、目的のためには手段を選ばない人なのだろう。一社員の、人生にも及ぶ影響など気にしていたらサクセスできないと。 ふつふつと沸いてくる怒りを鎮めるかのように、私はぬるくなったお水を飲んだ。 一口飲むと、喉の渇きに気づいて、一気に飲み干した。冷めきったコーヒーには見向きもせずに。 グラスをテーブルに置いた時、それを合図のように真山さんは再び話し出した。 「残酷なようだけど、あの時の僕は、復讐のために悪魔に魂を売ってしまった…奈美子がどうなるかなんて、全く考えていなくて、ただ、あの矢崎部長がどう料理してくれるか、なんてことを思いついて…奈美子が糾弾されて会社での居心地が少し悪くなってくれたら、少し距離を置こうと言ってそのまま…」 フェードアウトか…。 真山さんは、言葉に詰まってしまった。もしかしたら、涙を見せずに泣いている? 「フェードアウトを目論んでいたら、先輩は突然解雇されてしまった、ということですか」 垂れた首の骨がすっかり見えていた。真山さんは痩せ体質だから、なんだか悲壮感さえ漂う格好だ。 ずずっと鼻を啜り上げる音が鳴り、やっぱり泣いてしまったのだと、余計に憐れを誘った。 「奈美子には済まないと思っている。心苦しくて、合わせる顔がなくて。奈美子が会いたがったけど、別れて以来一度も会ってなかった。そのことも後悔してる。君からさっき、体を壊したと聞いて、心底悔やんだよ。奈美子を助けてあげるべきだった」
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