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アパートに帰りつくと、疲れがどっと噴き出した。『お風呂めんどい』けど、入らないわけにもいかない。
座ると立てなくなりそうだったので、スーツのままお風呂を立てて、その間にキッチンでお湯を沸かし、冷蔵庫の中から昨日の残り物を出してチン。非常食のカップ麺をセット。
スーツを脱いでインナーの上にカーディガンを羽織った姿で、簡単な食事をとった。
食べてすぐだけど、時間がない。お風呂に入って、烏の行水の如くすぐに出た。
こんな時間なのに、持ち帰った仕事があったのだ。明日、本部長に話を持っていくのだから、できる限り時間を作っておかなくては。
もし本部長の時間が取れなければ、土日のどこかで会ってもらえるよう、頼むつもりだった。
月曜の定例会では、フロアー各部署の人たちに暴露して、営業部長にぶつける前の根回しだ。
『そんなに上手くいくかな?』
金曜日。出勤直後、本部長室へ。ドアをノックをするが、まだ本部長は出てきていない。
出張とかじゃないよね、と不安になった頃、大柄な体躯のずっしりとした腕が肩を叩いた。
「ヒャッ」
びっくりして、つい声が出てしまった。本部長だ。
「どうした?急用か?」
「あ、おはようございます。すみません、朝から」
本部長は、自室のドアを開けながら、不審そうに私を見た。
「朝一から必要なことなのか?」
ごもっともな意見です。恐れおののきながら、部屋に入り私は言葉を絞り出す。
「本部長、今日ですが、少しお時間を頂けないでしょうか?定時後でも構いません」
「時間?うぅん…」
本部長は自席からスケジュールの書かれたボードを眺めながら、鞄から手帳を取り出した。
「仕事の用件なら4時に30分。仕事でないなら6時半からだ」
本部長はきっぱりと言った。くどくど言われなくて助かった。
「では、6時半からで」
ありがとうございますとよろしくお願いしますと言って、私は退室した。
部屋を出たところで室長やら他部署の管理職たちとすれ違った。始業前に打ち合わせか。
室長は、本部長室から出てきた私を不思議そうな顔をして見送っていた。
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