7.援軍

4/22
前へ
/310ページ
次へ
席に着くと、あや美に昨日はごめんねと伝えてから、みちるの席に目をやる。みちるは見当たらなかった。 「みちる、来てない?」 あや美に確認すると、 「さっき、室長に電話があったようで、なんかお休みしますって。体調不良って言ってたそうですけど…芽衣子さん、どうしますぅ?」 ショボンとして報告してくれた。 半分ズル休みのようなものだろうけど、思い悩んで本当に具合い悪くなっちゃったのかな…どうしますって…どうしましょう。 「仕方ないね、今日も乗り切るしか。明日にでもみちるに連絡してみるよ」 「芽衣子さん!私、ライン交換済みです!」 あや美が嬉々として言った。お手柄だと言えと?私は笑った。 「じゃあ、あや美に任せるか」 丸投げ感満載だけど、今は助かる。みちるもあや美の方が話しやすかろう。 花の金曜日なんて、いつの時代の話だか。私が『花』の金曜日を味わったことは…ない。 決戦は金曜日という歌があった。この決戦は恋愛に関して。やっぱり縁のない話だ。 ただ、どういう訳か毎日毎日残業続きだというのに、ドイツもコイツも金曜日には姿を消す。今日もそう。 ふと、フロアーの静けさに顔を上げると、残っているのは僅か数名。オジサンクラスも帰って行った。いや、どこかで飲んだくれるつもりだろう。 オジサン連中以下の非リア充だと思うと、心がささくれそうだ。 6時半になるのを見計らい、一応帰り支度をして本部長室へ内線を掛ける。もちろん、本部長は在室で、私との約束を忘れてもいなくて。 「芽衣子君か。待たせて悪いが、あと少し時間をくれないか。その代わり、外でご馳走しよう」 「はい、大丈夫です。では、出られる時にご連絡ください」 なにかと忙しい本部長は、ほとんど定時では帰らない。部下の誰より遅くまで仕事をしていると、以前、四方堂君が話していた。 だから、多分、今日はかなり無理をしてくれたのだと分かっていた。 私は、何時間でも待つつもりでいたのだ。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加