1.厄日

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今夜の食事は、自炊か買って帰るか、どこかで済ますかの選択では、買って帰るに軍配。寒い以外の理由としては、『靴の中がヤバい』から。 グズグズに濡れたままで一日履き過ごしてしまった。暖房のおかげで冷たい思いはしなかったものの、濡れて暖まった中敷きが、心なしか軟らかいような感触で気持ちが悪かった。 スーパーでの自炊の買い物は時間がかかるから、パッと店頭で買えるものを頭に描いた。 JRに乗り、バス停で待つこと3分でバスに乗車。バス停を降りたら、自宅アパートとは逆方向だけど、少し歩くと商店街がある。 商店街は10軒ほどの小ぢんまりしたアーケード街だ。 ここにお惣菜屋があって、お弁当もそのお惣菜を使い、好みのものを伝えるとその場でパパッと詰めてくれる。実家のご飯のような、当たり前のおいしさだ。食べるとちょっと感動するやつ。 客の出入りは落ち着いた時間帯で、お惣菜屋は残り物しかないだろうと思いつつ、お目当てのものを探した。 私は、迷わず牛丼を注文した。 「野菜は?野菜摂らないとねぇ」 おばちゃんが、セールストークなのか私の健康を心配してのことか声を掛けてきた。 「野菜ねぇ…」 一回だけ悩むフリ。冷蔵庫の中に残り物があるはずとおばちゃんに断って、牛丼だけを手に入れた。事実、茹でただけの野菜があったのだ。 『あれをチンしてドレッシングかけて…』と、食卓をイメージしながらくるりと体を回して帰りかけた時、順番を待っていた次の客の顔が真ん前にあって目を剥いた。 「はっ、すみません!」 焦った私は、体を横にスライドして、避けながら思い出していた。『この人、朝の…』 その時、足元でズルリという感触がしてパンプスが脱げた。 「わっ」 つい、その人の肩に縋ってしまった。 「あっ、すみません!ごめんなさい」 その人は、咄嗟に私の腕を支えてくれ、なんとか転倒せずに済んだ。が、脱げたパンプスは、内張りのインソールが剥がれて、私の足の裏にくっついていた。 私はその人に謝りながら、その状況に驚くことと恥ずかしさで、今日一番のパニックに陥っていた。
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