7.援軍

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腹が決まっていたおかげで、落ち着いて言えたと思う。 もし玉と散る結果となろうが、自分のしていることが自分の為ではないということが私自身を支えていた。 『本部長の顔色は想像すまい』と思った時、本部長の『頭を上げて座りなさい』という穏やかな声にハッとした。 うっかり、このまま銅像になってしまいたいとの考えが浮かびかけていたことに、自分でも呆れた。 「ありがとうございます」 私は汗をかいていた。座ると言ってもソファーしかないから、本部長が移動するのを待って、私は文字通り本部長と向き合った。 「僕らと共犯になる、その覚悟はあるのかね?」 ゆっくりとした口調ながら、あまりに唐突なことを言われた。 私の内心は、『共犯?』『僕ら?』と驚きに満ちていたが、ポーカーフェイスを装った。 「そもそも、私はひとりで矢崎部長に対峙するつもりでした。結果的にどうなっても、私は私自身を守るつもりはなかったんです。そういう覚悟はあります」 一気に言い切った。もう戻れない感じがする。 「事情を知るものが数人いるんじゃなかったか?」 早川先輩と南雲さん、真山さんだ。あとは四方堂君とあや美がなんとなく絡んでいて、それと滝沢さんも。 滝沢さんには、いざとなったら真山さんと一緒に証人になってもらおうと考えていた。 ただ、他の人たちには、事が済むまで詳細を話すつもりはなかった。巻き込みたくない。これは、私の自己満足の闘いだから。 「事情を聞くために話をしましたが、それぞれ最小限だけです。証人になってくれそうな人たち以外、この件には誰にも直接関わってもらいたくないので」 そう言った瞬間、私は悟っていた。そうなのか。本部長も…。 「本部長…も、そういうつもりで私に一旦手を引けと仰ったんですね」 『矢崎部長を追及するとなれば、あっちだってなにを仕掛けてくるか分からない。当然、そうなれば無傷では済まないだろう。矢面に立つのは自分だけで良いと、私を庇ってくれたのだ』
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