7.援軍

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夢中でパソコンに向っていたら、隣からなにやらメモ用紙がスッと寄ってきた。あや美だ。 『朝から本部長と金曜日の続きですか?万事順調なのでしょうか?』とある。やっぱり、あや美は心配してくれていたのだなと、素直に嬉しかった。 私はメモに『OK』のスタンプを押してあや美に戻した。 おしゃれなOLさんが使っていそうな、かわいい事務小物がいくつか小さくまとめてデスクの隅に置いてある。早川先輩が退職する時に置いていったものだった。私には、あまり使い道はないけど。 あや美が私の方を見ているのがわかったので、親指を立てるサインで笑って見せた。 もし、本部長と共になんらかの責任を負う羽目に陥ったとしても、この子が誰かに恨みを抱くようなことになってはいけない。だから詳細は教えない。勝ち戦で終わるまでは。 ふと、目をオフィス内に向けてみた。午前中の慌しさは喧騒が教えてくれる。 電話はよく鳴るし、落ち着いてデスクに向かっているだけでは済まない。 やはり、みちるは間違いなく我が部署の戦力だ。雑多な仕事が多くて、軽く見られていたし、私自身も軽めの雑用係ぐらいに思っていたけれど。 みちるが戻ったオフィスには、本来のあるべき姿で皆が仕事をこなしていて活気があった。 そしてなにより、悲壮感が払拭されていた。(終わりが見えない仕事、今週は定時で帰れるのかとか、慣れないコピー取り、ちょっとしたお使いがいない、喉がいつも乾いている等等) 滝沢さんの抜けた穴というのとは少し違う。みちるの仕事は、縁の下の力持ち的な存在で、私たちを支えてくれていたのだ。
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