7.援軍

15/22
前へ
/310ページ
次へ
そろそろ会社に戻らねば、というタイミングに、私たちの横をモノトーンの団体(5、6人)が通り過ぎた。 そのうちの1人から、私は頭をなにかでポンと軽く叩かれた。 きょとんと固まったのち、その相手の方を振り返ると四方堂君だった。その先に、南雲さんの姿もあって、彼は私に小さく手を振っていた。 「あ!営業部の人たちですね。来ていたんですね。全然気がつかなかったですぅ」 「いつからいたんですかね。こっちのこと気がついていたんでしょうか」 2人の女子は、今更のように、恥じらいを見せていた。彼女らが思い返したのは、食事中、大きなお口でパスタを頬張っていたこととか、面白話に夢中になりげらげら大笑いしていたこととか、パンのお代わりを頼んだこととか、全部の料理を完食したこと…かな? 恥ずかしさを感じなければ女は終わりなのか…私はそこのところを知りたいと思う。でも、この2人には聞けないな。 そんなことを考えていたらラインの着信。今、店から出て行ったばかりの四方堂君だった。 『みんなで楽しそうに食べていたね。混ざりたかったなぁ』とあった。 もう店を出ないと、と伝票を掴んで立ち上がる。会計もするから、四方堂君のラインは不本意ながら既読スルーとなってしまった。 『いろいろ心配もしてもらいながら、私のこれは不義理以外のなにものでもないのかもしれない』と、四方堂君へは申し訳なさが先に立つ。 いずれ全てを話せる機会を得て、四方堂君とはきちんとしておきたかった。それまでに私が見放されなければいいけれど…。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加