7.援軍

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午後一番での会議は、6階部署が集まる定例会。私たちは揃って7階の会議室へと上がっていった。 人数が多いため、大きな楕円形のテーブルの後方にも椅子が置かれ、二重の人の輪になる。 後方席の殆どは派遣社員たちが進んで座るが、そこの垣根はなく、中座する者や遅れる者が座る場合もあったし、報告事項がなければ私も後方に座っていたかった。 本部長も含めて、議題に上がっている項目を一つ一つ吟味しながらの報告会なので、自分の関わりのないテーマになると眠気は容赦なく襲ってくる。 あや美も派遣社員の殆どの女子たちも、焦点の定まらない目で固まってしまうし、男性社員も例外はない。 ただ、完全に眠ってしまう者はいない。本部長の前でそれができる者がいたら、私は尊敬する。かなりの強者に違いない。 ランチが重かったせいで、私もデンジャラスゾーンに近づきそうに。でも、今まで、会議中の意識消失は経験がなかった。 私はやはり、本部長に相対すると背筋が一際張るような緊張感をいつも感じている。 でもそれは、リスペクト故に、本部長には『良い評価を受けたい』という願望からかもしれなかった。 予め議案を提出していた件について、私は詳細を報告した。室長と次長が度々発言の補足をしてくれ、少し荷が重いと感じていた業務の遂行がスムーズに行われ、私はホッとして着座した。 ほぅっと息を吐いて、改めて大きな会議室の面々を見渡した時、アレ?と思う顔を見つけた。『ええと、この人、誰だっけ』 勿論、顔や名前が一致しない社員がいても、私の場合は不思議ではなかった。 ただ、その人に関しては、どこかで見たという印象があったため、アレ?と思ったのだ。 私が、目玉だけ動かしてチラチラとその人を見ていたら、なんとなく視線を感じ、恐る恐るそちらに視線を向けると、本部長が私をじっと見つめていた。 『うっ…なんか知らないけど、気まずぅい』 私はサラリと視線を外して、メモを取る振りでごまかした。 でもでも、あの人、なんか気になる…誰だろう。
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