7.援軍

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「吉森さんて、もと営業部だそうですよ」 みちるのひと言に、頭の中の靄が晴れ、白熱灯の灯りぐらいの光が差したようになった。 営業部のなにかの報告書に『吉森道哉』という名前を見たことがあったのだ。 直接の仕事をしない限り、フロアーの違う他部署の人間は私の記憶に滅多に残らない。 けれど、その人とは間接的に仕事をしていた。つまり、四方堂君の担当だったのだ。私は書類仕事をしただけ。 「いつからギタイへ?確か営業部で、一昨年辺りに四方堂君が関わっていたけど?」 「それが、更衣室で聞きかじっただけで、詳しいことは知らないんです。その時聞いたのは、吉森さんが異動してきてから一度も出社して来ないと、あそこの派遣仲間が不審がっていたんです。でもそれ、1年以上前の話ですよ」 「へぇ…」 私とあや美は少しばかり驚いていた。 詳細は不明ながら、そんな特殊なケースの人もこの会社にはいるのだと。病気休養だろうか。 あのラウンジで見かけた時、吉森さんは原稿用紙のようなものに、何やら夢中で書き込んでいた。 数日そこで過ごしていたかのように、髭が生えていたし、なんとなく髪とか服装もむさくるしいような感じがした。 例えれば、町中でホームレスを見かけたりすると、無意識に視線を外すような感覚に似ていて、見た瞬間に、その人の存在を思考活動から追い出してしまったのだ。 定時になり、みちるに帰るように促した。あや美は、私が残業するつもりだと伝えると、自分も少しやっていくと言い、どうやら付き合ってくれるみたいだった。 この先長いからと、近くのコンビニへ行くことにした。勿論、あや美もくっついて来た。 温かい飲み物とおにぎりとチョコレート、エトセトラ。買い過ぎたきらいはあったけど、今夜は仕事というより本部長との約束までの時間潰し。なんなら、あや美とずっと喋っていてもいいかなと思っていた。
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