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1時間後、フロアーの大半が帰って行った。我が部署は私たちだけ。
「あや美もそろそろ帰ったら?別に急ぎでもないでしょ?」
あや美のパソコン画面を覗き込み、帰宅を促したが、あや美は帰りたくないような雰囲気を醸し出していた。
「芽衣子さんは?」
どうやら一緒に帰りたいのかと、私は仕方なく、本部長との約束があることを打ち明けた。
「9時過ぎると言うの」
あや美は驚いていた。
「芽衣子さん?あの件、本当に大丈夫なんでしょうか…金曜日と今朝と今夜、本部長とどういう話になっているんですか?」
あや美のショボンとした声音が、心の底から心配しての言葉だと思わせホロリとする。
「勿論、大丈夫。本部長は自分に任せろと言ってくれたし。あや美は気にしなくていいのよ」
「だいぶ気にしますよぅ」
ぶつくさ呟くあや美をなんとか宥めすかして、7時には帰した。
あの子の気持ちは、涙が出るほどありがたかった。もしかしたら、あや美にも四方堂君にももう少し頼っても良かったのかもしれない。
頑なにひとりでやることにこだわってきて、この孤独の闘いには、本来の敵だけでなく、弱気という己心との闘いもある。
あや美がいたら、いつだって私を信じてくれて自信をつけさせてくれるはず。
四方堂君なら、常に最良で最強の作戦を考えてくれただろう。
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