7.援軍

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8時過ぎ、本部長から内線があった。私の地元の店名を教えてくれという。 こないだのような豪勢なところは知らないから、個室もあったしいつものご飯屋にしようと、駅徒歩5分程にある店の名前を伝えると、『分かった。芽衣子くんは先に行ってなにか食べていてくれ』と言ってくれた。 この対応は本当に助かる。お腹ぺこぺこだったし。 店には本部長が連絡してくれるとのことなので、私はサッサと帰り支度をして、ほとんど人気のないフロアーにザッと目を走らせてから無駄な電灯を一つ一つ切っていった。 帰り掛けた時、ギタイにぽつねんと座って書き物をしていた吉森さんを見つけたので、さりげなく近づく。 「お先に失礼します」 声を掛けると、吉森さんはよほど集中していたのか、こんなふうに声を掛けられるのに慣れてないのか、「わっ!」と、あからさまに驚いた。 眼鏡がズレてしまい、瞼をパチパチさせていた。私を知らないのだな。 「あ、すみません。お邪魔して」 私は一礼してその場を立ち去った。
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