8.策略

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本部長からはご飯を食べていていいと言われていたのを幸いに、ハンバーグディナーのフルセットを注文した。前菜とパン、メインとサラダにスープ、コーヒー。スイーツは、食べられるかわからなかったから、後で追加するかもとだけ伝えた。 粗方食べ終え、時計を見ると9時45分だった。 『本部長、遅いなぁ』と、コーヒーを飲んでいたら、着信。本部長からだった。 「芽衣子君、待たせて悪かったね、もう近くまで来ているから」 良かった。 「こちらこそ、お気遣いに甘えて、本部長をこんな遠くまで来させてしまって恐縮です」 電話から数分で本部長が店内に入ったのが分かった。声が聞こえる。 店員さんに連れて来られる前に、私は個室から顔を出して、本部長を手招きした。 その時に、またしてもアイツがこっちを見ているのが遠目でも分かった。 『上司らしき人と遅い食事…アイツはどう思っているのだろう。そんなんじゃないからね!』 疲れた表情も見せず、本部長は店内をキョロキョロやってから、気に入ったのだろうか、ご機嫌だった。 私に、『食事は済んだね?』と確かめてから、ワインにアペリティフとパンをいくつか頼んだ。 「芽衣子君も飲むだろう?家も近いことだし」 「あ、はい。では少しだけ」 個室は四畳半ぐらいの広さに丸いテーブルと椅子が六脚。隅には、アンティーク調のチェストと観葉植物の大鉢が置かれていた。 窓はあったけど、外の様子はわからなかった。代わりに、外からは覗けばバッチリな感じで見えるだろう。 ともあれ、注文が揃うと、本部長は早速始めた。
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