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本部長からはご飯を食べていていいと言われていたのを幸いに、ハンバーグディナーのフルセットを注文した。前菜とパン、メインとサラダにスープ、コーヒー。スイーツは、食べられるかわからなかったから、後で追加するかもとだけ伝えた。
粗方食べ終え、時計を見ると9時45分だった。
『本部長、遅いなぁ』と、コーヒーを飲んでいたら、着信。本部長からだった。
「芽衣子君、待たせて悪かったね、もう近くまで来ているから」
良かった。
「こちらこそ、お気遣いに甘えて、本部長をこんな遠くまで来させてしまって恐縮です」
電話から数分で本部長が店内に入ったのが分かった。声が聞こえる。
店員さんに連れて来られる前に、私は個室から顔を出して、本部長を手招きした。
その時に、またしてもアイツがこっちを見ているのが遠目でも分かった。
『上司らしき人と遅い食事…アイツはどう思っているのだろう。そんなんじゃないからね!』
疲れた表情も見せず、本部長は店内をキョロキョロやってから、気に入ったのだろうか、ご機嫌だった。
私に、『食事は済んだね?』と確かめてから、ワインにアペリティフとパンをいくつか頼んだ。
「芽衣子君も飲むだろう?家も近いことだし」
「あ、はい。では少しだけ」
個室は四畳半ぐらいの広さに丸いテーブルと椅子が六脚。隅には、アンティーク調のチェストと観葉植物の大鉢が置かれていた。
窓はあったけど、外の様子はわからなかった。代わりに、外からは覗けばバッチリな感じで見えるだろう。
ともあれ、注文が揃うと、本部長は早速始めた。
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