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「本部長、お食事は?もし良かったら、もう少し注文して召し上がりませんか?」
確か、ラストオーダーは9時半だったような…もう、とっくに過ぎてるけど。
「大丈夫だよ、これで。それに予約の時に、少し時間オーバーすると言ってある」
なるほど、根回し済みですか。では、遠慮なく。
ワインを2人で半分ほど飲んだところで、私は早速話を振ることにした。
「それで、矢崎部長にはどのように…」
攻撃を仕掛けるのかと言い終わらぬうちに、本部長が私を制した。
「芽衣子君は、技術対策室の吉森という男を知っているかね?」
私は「あ」と、声を漏らした。
「知ってます!というか、今日の会議で見かけない人だと思い、少し人に聞いてみたところでした。あの人が?」
本部長が『僕ら』と呼んだ相棒なの?なんか意外というか、頼りなさそうだけど大丈夫なのかな。
「彼は優秀な営業部員だったよ…あの一件で、実は営業部も無傷ではなかった。吉森君の反乱があったんだ」
「反乱?あの人が?」
驚いた。反乱ということなら、事の中心にいたということなのか。
「矢崎君はやり過ぎたんだよ。吉森君は、その片棒を平気で担げるような悪人ではなかった」
「なるほど…と言うことは、あの…伊藤さんと直接通じていたのは吉森さんなんですね?」
「そうだ」
本部長は終始落ち着いていて、時々ワインを飲みながら『うまいな』と、ひとり言まで言っていた。
「それで…吉森さんはどういう手を?」
本部長は座り直してテーブルに両腕を広げて乗せた。
「その前に、吉森君のことを少しだけ話させてくれないか」
「?…はい」
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