8.策略

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「本部長、お食事は?もし良かったら、もう少し注文して召し上がりませんか?」 確か、ラストオーダーは9時半だったような…もう、とっくに過ぎてるけど。 「大丈夫だよ、これで。それに予約の時に、少し時間オーバーすると言ってある」 なるほど、根回し済みですか。では、遠慮なく。 ワインを2人で半分ほど飲んだところで、私は早速話を振ることにした。 「それで、矢崎部長にはどのように…」 攻撃を仕掛けるのかと言い終わらぬうちに、本部長が私を制した。 「芽衣子君は、技術対策室の吉森という男を知っているかね?」 私は「あ」と、声を漏らした。 「知ってます!というか、今日の会議で見かけない人だと思い、少し人に聞いてみたところでした。あの人が?」 本部長が『僕ら』と呼んだ相棒なの?なんか意外というか、頼りなさそうだけど大丈夫なのかな。 「彼は優秀な営業部員だったよ…あの一件で、実は営業部も無傷ではなかった。吉森君の反乱があったんだ」 「反乱?あの人が?」 驚いた。反乱ということなら、事の中心にいたということなのか。 「矢崎君はやり過ぎたんだよ。吉森君は、その片棒を平気で担げるような悪人ではなかった」 「なるほど…と言うことは、あの…伊藤さんと直接通じていたのは吉森さんなんですね?」 「そうだ」 本部長は終始落ち着いていて、時々ワインを飲みながら『うまいな』と、ひとり言まで言っていた。 「それで…吉森さんはどういう手を?」 本部長は座り直してテーブルに両腕を広げて乗せた。 「その前に、吉森君のことを少しだけ話させてくれないか」 「?…はい」
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