1.厄日

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アパートに帰りつくと、まず始めにパンプスをゴミ箱に放り込んだ。忌々しい思いで。 あの後、おばちゃんには思い切り冷やかされるし(当分、あの店に行けないじゃないか)、質問を躱すのにドギマギして、なんだかバカみたいだった私。 「一体、どういうつもりなんだか」 声に出して、不愉快な気分を吐き捨てた。 食事をとり、お風呂にゆっくり浸かった。テレビはつけないでおいた。観だすと長々観てしまい、遅くまで起きていることになるから。 ビールはどうしようかと迷ったが、結局飲むことにした。生理中の飲酒は良くないのだが、これが飲まずにいられるかという心境なのだ。 チビチビと缶に口をつけてゆっくり飲む。ついでに携帯をチェックしたら、四方堂君からの着信があった。2回も。 四方堂君がなにかしらの言い訳をするつもりなんだと直感した。 『させるもんか。悪い事をしたと、ずっと思わせとくんだから』 折り返しも、メールもしないで放置を決め込む。今夜は早めに寝ることにしていた。明日は早く出社するつもりだったから。 考えたいことはたくさんあった。飯島課長のことが一番大きかったが、ポーチの持ち主のことも気にかかっていた。 ベッドに潜り込むと、ようやく一息つけた気がしていた。心も体もヘトヘトの一日がやっと終わったという安心感があった。自然、今日という日を後々笑い飛ばすようになれればいい、と願っていた。 朝の目覚めは絶好調。朝食をしっかり摂って、身だしなみからメークまで念入りにした。 そして、いつもよりかなり早めに部屋を出た。 バス停で、昨日の彼をふと思い出す。 『会うわけない。合うわけもない…』あんな軽薄な奴。
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