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本部長は約束してくれた。作戦としては、来月の取締役会議で、本部長が動議を起こす。矢崎営業部長の悪辣な仕事をすべて白日の元に晒す。そうやって追い詰めていく作戦だった。
矢崎部長が言い逃れられないように、証拠を固め、その場で決着をつけると、本部長ははっきり言った。
私は密かに、会議を盗み聞きするにはどうやったらいいかと考え始めていた。
閉店時刻を大幅に過ぎ、私と本部長は店を出た。
多分、本部長は、かなり多めに支払いをしたんだと思う。マスターはほくほく顔だった。
駅前のタクシー乗り場で本部長を見送った。先に私を送ってくれると言ってくれたが、丁重にお断りした。
アパートに帰りつくと、精根尽きた有様でベッドに倒れ込んだ。
20代の頃はよくやった、そのまま寝てしまう、が今の私にはできない。
10分ほど微動だにせず、内心葛藤していたが、やはりヨロヨロと起き上がった。
お風呂を入れ、化粧を落とす。明日の準備を大雑把にし、風呂に入った。
入ってしまえばあとは流れに任せるしかないから、ある意味楽だ。ルーティンなのだから。
30分後、ベッドに入って思いに耽る。
『吉森さんか…』
本部長から聞かされた吉森さんの話は、私の想像を掻き立てた。
伊藤さんを口説いたのは策略のため?そんなの酷いじゃないか。上司の命令ならどんな汚いことでもしなければならないのか?それではまるで『イェルサレムのアイヒマン』ではないか。思考の欠如が悲劇を招く…。
仕事とは一体なんなのか。上司に振られた事を私見なくやり遂げるのが仕事?
『そう』じゃなくて『こう』ではどうか、という提案はありではないのか。
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