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私にはまだ、そこまでやれる気がしなかった。
私は、目先の課題をこなす事しかできない。責任の取り方だって知らないのだ。
…四方堂君ならどうするだろう。
上司は選べない。仕事も選べない。与えられた仕事をこなさなければ『無能』のレッテルを貼られ、いずれ島流しなのだ。それが組織というもの…。
『怖い』と、率直に思う。私は…本部長の部下で幸せだったのだと、今更ながら我が身の幸運に感謝した。
勿論、室長、次長という直接上長の人柄も。
そのお陰で、私にはとても居心地の良い職場なのだから。
いつの間にか眠って、気がつけば朝だった。目覚ましより早く目が覚めてしまった。
ご飯は冷凍ご飯をチンして、作り置きのお惣菜とインスタントのお味噌汁で朝食をゆっくりとった。
いつも通りのバスに乗り、出勤スタイルも隙がない。
最近は、馬鹿みたいな失敗が減ってきていた事に、私は気づき始めていた。
『遅まきながら成長してきたのだ』
我ながらくすぐったいけれど、素直に認めて喜んでしまえとも思う。
駅に着いて、ホームで上り電車を待っていると、左肩に圧力を感じ振り返った。
「や、おはよう」
『ゲ』コイツ…朝からなに!?
そう言えば、と思い出した。昨夜、店で会ったんだっけ。こっちを気にしてる風だったなと思い出していると、ヤツは朗らかに言い放った。
「なぁ、あの彼、君にはちょっと年上過ぎない?それに、妻帯者っぽい貫禄だったし…」
やっぱり、不倫だと思われていた。私は、ガックリきた。『うぅぅ、メンドクサイ』
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