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「余計な詮索。余計なお世話。下衆の勘ぐり」
そう言い返してソッポを向く。そして、ソイツに女の連れがいた事を思い出した。
「君、デート中に私なんかに興味津々でいて、彼女に怒られなかった?」
するとアイツ、真面目な顔になり、遠くに視線をやった。
「別に、デートじゃないですよ。あの人は彼女なんかじゃないから」
いいよ別に興味無いとも言えず。
「そう?残念ね」
と、返した。そこへ電車が入ってきた。
ホームのアナウンスと音楽、電車の稼働音で、ヤツとの会話は途切れた。
私は電車に乗りこみ、そのままズイっと奥に進み、ヤツから距離をとった。
彼女だろうがなんだろうが、どちらでも結構。お好きにどうぞ。でも、そうそうやたらと気軽に話しかけるのは遠慮してもらいものだ。
悪い人ではないと分かっている。でも、こんなふうに恋愛が進むって事を承知もしていて、今現在、恋愛する気がゼロな私には一番避けたい人物なのだよ、君は。
もうヤツの姿を探すことなく、電車に揺られた。
どちらかと言えば、スッキリした顔でオフィスに到着した。
コーヒーでも飲もうと、ユーティリティコーナーでインスタントコーヒーを入れ、デスクでマッタリしていたら、あや美が現れた。
「芽衣子さん、おはようさんです…あれ?」
「おはよう…なに?」
あや美がマジマジと私を見つめている。私の顔を横から下から、舐め回すかのように。
「芽衣子さんたら、今日、なんかちがうんですけど…昨日なんかありましたぁ?」
この手の質問が一番苦手だわ。私はため息をついて見せてから答える。
「一昨日からの食事が充実していたからでしょ」
と、無難に処理。
「ホントですかぁ?なんか、良い事無かったですかぁ」
あや美、しつこい。なんなのよ。
「ホントホント。それ以外のことなんて悩みばっかりよ。今朝だって、近所のやな奴から不倫だと指摘されて不愉快極まりなかったし」
あや美はキョトンとした。驚いていた。
「ふ、ふりん?芽衣子さんがですか?誰となんですぅ?」
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