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役員会議を盗み聞きするなんて、正気の沙汰ではない。
万が一、本部長が返り討ちに合ったからと言って、私が飛び出していく訳には行かないんだし。
それでも、本部長からの報告をただ待つということが、この後に及んでは難しかった。
答えを早く知りたかったし、実際のやり取りを知っておきたいと思ったのだ。矢崎部長がやられる様を知りたいというのが本音かも。
4時頃、数人ずつの塊になって、それぞれお茶やコーヒーを飲んで雑談が始まった。
このちょっとした休憩さえも、私はなかなか取れはしない。いつもいつも一杯いっぱいなのだ。
周りの和やかさにつられ、あや美とみちるのお喋りが始まったのを合図に立ち上がる。
「ちょっと席外すね。すぐ戻るから」
そう言い置いて、私は7階へと向かった。
営業部内は閑散としている。出払っている感じだ。
それでも、各課のリーダーと数人いる営業事務の女性社員は忙しそうにしていたし、電話の呼出音がひっきりなしに鳴っている。
営業部を遠目からチラ見して、私は、会議室の隣のドアをゆっくり開けてみた。
会議室にはそれと分かるような表示があるのに、この部屋はなんなのか…と思いながら、ひと目見て直ぐに分かった。備品倉庫だ。
6階は、備品コーナーなのに、その充実度は本家と分家ぐらいの差があった。
ズラリと並んだ備品棚には、他に防災用品もあり、水、食糧、毛布などのそれらが場所を取っていた。
「なぁんだ、ここにこんな装備があったのか」
もしかしたら、私だけが知らなかった可能性は高い。普通に、入社時に説明がある事柄だと思うし。
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