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倉庫内の奥まった辺りは棚の陰で、よく見えなかった。行ってみると、ファイルがズラリ。中はなんだろうと覗き見ようとした時、隅のグレーの扉を目の端に捉え、驚いて二度見してしまった。
他の扉と同じような重そうな木製扉。ただ、ひと回り小さいように見える。
『こんな所になんで扉が?』
この壁の向こうは第1会議室だ。もしかしたらここが会議室に通じてる?
第1会議室は、何度も足を運んだ場所とは言えない。恐らく、二三度だと思う。会議室の壁に、こんな扉あったっけ?
思い出そうとしたけど無理なので、私はそっとドアノブを回してみた。鍵は掛かっていなかった。というか、鍵穴が存在していなかった。
扉の向こうは、期待していた会議室ではなかった。なぜだか真っ暗闇で。
掌を壁に這わせてスイッチを探すと、うまく行き当たりパチッと灯りがついた。
『なにここ?』縦長の小部屋に、ギッシリと折り畳み椅子。
そして、開け放った扉の正面に、もう一つ、扉の存在を認めた。
ここから会議室に出入りできるのか…。
私は、同じく鍵穴のないそのドアノブに手を掛けた。回る。押すのか引くのか分からなかった。
もし、今会議中だったら?もし、会議室に誰かいたら?
『まずいよ、かなり』
そう頭で分かっていたのに…右手への司令がうまく制御できなかった。
ガッシャーン!ガシャーン、ガシャッ!…
「やった…」
やってしまった…。
どうやら、会議室側の扉前にも折り畳み椅子の山が築かれていたらしかった。その絶妙なバランスで積まれていた山を崩してしまった。
『手が、勝手にドアを押して…』などと言う言い訳は、多分言い訳にはならない。
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