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「お前、ここで何してる?」
心臓がドキーン!とした。
焦って、声のした方を振りかぶった。驚きのあまり、瞼が最大に開いていた。
すると、四方堂君が会議室の入口でドアノブを握ったまま立っていた。
「よもどぉくんかぁ…はぁぁぁびっくりしたぁ…」
私は、すぐさま四方堂君に走り寄る。
「誰か一緒?」
「いや、俺だけだけど。だから、芽衣子はここでなにしてんの?あぁあ…これ、お前がやったの?」
四方堂君は、椅子たちの雪崩の惨状を目にして、かなり呆れているようだった。
「話せば長くなるのよ。それより、ちょっと手伝って」
私は四方堂君の袖を引っ張って、とにかく助っ人が現れたことを喜んだ。
「これ戻すのか。やれやれ」
四方堂君は飲み込み早く、上着を脱いで椅子を片付け始めた。
「あ、ちょっと、ちょっとだけ待って。ボールペン、ある?」
椅子を2脚手に、固まった四方堂君は、『は?』と再び呆れ顔を見せた。
そして、椅子を手放し、脱いだ上着のポケットから会社の備品のボールペンを取り出した。
「ありがとう」
私はひったくるようにそれを手にして、さっき作った小さな扉の隙間にボールペンを差し入れた。思った通り、1センチ未満の隙間をキープしている。
「これで良し」
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